黒を以て白を制す


 入社して数年。いーや、生まれて25年。私ってドコに行こうが、いつもこうだ。


 冷めた目付き。気が強そうな眉。清ました鼻。人を小馬鹿にしたような口角。漫画から飛び出てきたような悪役面。

 怒った相手を『ふざけるな。馬鹿にしてるのか!』と更に逆上させる確率95%。


 第一印象は大体『性格が悪そう。意地が悪そう。根性曲がってそう』の3拍子。化粧をしてもしなくても反応は同じ。生意気だとか偉そうだとか馬鹿にしてるだとか、キレられた経験は数え切れず。


 おまけに口数が少ない上に言葉足らず。言い返すのがメチャクチャ下手。

 そんな見た目や性格が災いして、私、安久谷桑子は気付いたらいつも悪役のポジションに就かされている。


 損な人生だと自分でも思う。どれだけ気を付けても悪印象を持たれ、些細な行動1つで誤解を招く。

 他の子がやった間違いは失敗で私がやった間違いは悪意。“あの子はいいけど、あの子はダメ”のダメな子の方。

 全く同じことをやったとしてもだ。許す許さないの差が出る。


 評価が厳しい。揉め事を起こさないように、人を傷付けないように、バカみたいに考えながら行動しても何か1つ間違いがあると全て私が悪くなる。

 もっと気遣え。もっと人の気持ちを汲め。もっと考えて発言しろ。もっと優しくしろ……と責めたてられる。

 私が尽くすのが当たり前。私が気を使うのが当たり前。私が我慢するのが当たり前。私が許すのが当たり前……と求められる。


 自分がその1000倍くらい失礼で愚鈍なことを私にやってたとしても、そんなの無視して平気な顔でお前が悪い、お前だけが悪いと責めたてられる。


 おまけに怒ると『私は弱いの。だから桑子が許さなきゃ。我慢して謝ってよ』と、謎に上から目線で謝罪まで求められる。

 周りも許さないお前が悪い。我慢してあげろ。謝れ。と、まるで私には感情がないように、相手には全く非がないように捲し立てる。


 くだらない。考えてみると本当にくだらない。私っていったい何?と思う。


 ギブアンドテイクの精神を持つのは、そんなにイケないことなのか。




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