黒を以て白を制す
「だから、そんな深く考え込まなくてもいいって」
「うーん。そうなんだけど……」
「ほんと安久谷さんってその辺、真面目だよね。細かいことを悩みすぎるというか」
「本当にねー。自分でも思う」
「もっと気楽に。適当に。軽い気持ちを持って。1つ1つを重く捉える必要はないって」
「……うん」
本当に“うん”だ。伊那君の言う通り。私っていちいち重い。心身共に根っからの闇属性。光属性な伊那君と私の決定的な差はこれかも知れない。
人生なんて右往左往するもの。重りをズルズルと引きずって歩いて行くよりも、空のペットボトルを頭上にひょいひょい投げながら歩いて行った方が何事も上手く行く気がする。
フットワークも軽くなるし。大事なモノだけ慎重にしっかり運べばいい。
「自分で言いたいなら言えばいい。出来る限りフォローは入れるし」
「……うん」
「まぁ、何かあったら頼ってよ。俺は安久谷さんの味方だから」
「分かった。ありがとう」
そう言って伊那君は見慣れたいつもの笑顔を私に向ける。穏やかに笑うその顔を見ていると自然と笑顔になっている自分がいた。
さすが伊那君だ。数分前はあんなにイラついてたのに今は心が軽いスッキリとしてる。回復魔法でも掛けられた気分。
それに伊那君が味方だと思うとかなり心強い。防弾ガラスに防弾チョッキ、防弾盾に防弾マスクまで装備しているようなもの。おまけに銃はバトルライフル。戦うには最強だ。