黒を以て白を制す
「まぁ、どうして?」
すると、壁に凭れて立っている萌とイスに座って紅茶を嗜む今城さんが見えた。手に持ったティーカップがお上品。萌が言った発言に疑問を感じているのか、不思議そうに首を傾げてる。
「だってほら、あの人、皆から嫌われてるし」
「あら、そう」
「あらそうじゃないよ〜!やばいって。一緒に居たら今城さんまで嫌われるよ?」
そう言って萌はテーブルに手をつき今城さんを真剣な顔で見つめる。
イジメの勧誘なんてジメっとした暗い場面だ。辺りに邪悪な雰囲気が漂っていたっておかしくない。なのに、どうしてだろう……。絵面がどう見たってお嬢様の優雅な午後のティータイムにしか見えない。
ただの狭い休憩室が緑溢れる広大な土地に建つ豪華な宮殿の一室に見える。金細工だらけの装飾とフリルが満載のファブリック、何なら姫ベッドまで見えて来そうだ。
いつもはヒロインの立場に居る萌も今城さんの前ではもはやお嬢様に仕えるメイドAにしか見えない。『お嬢様、あの男は危険です!親しくするのはおヤメになって』と懇願しているメイド。
そのメイドみたいに彼女を心配して言うならまだいいが、萌の心の中にあるのは黒い野心だ。私を消そうとする意地悪心。複雑な心境だ。