黒を以て白を制す


 「それにしてもあの方はいったい何なの?失礼だし、許せないわ」

 「んー、まぁ、萌はなぁ…」

 「桑子さんも桑子さんよ。失礼なことをされても許して差し上げるから怒られないと思って付け上がるんです」

 「……そうかな?」

 「そうです。酷いことをされたら、ちゃんと怒りましょう。自分のことを嫌いだと言うなら尚更。遠慮なく」

 「うん」

 「嫌いだから嫌がらせをしても当たり前。自分は許さないけど相手は許して当たり前。そんなの向こうの独り善がりな甘えなのですからね」


 キッパリさっぱりと言い、今城さんは仁王立ちで強気な眼差しを私に向けてくる。


 まるで師匠と弟子だ。仕事のときとは立場が逆。処世術の先輩。手を掴んだら上へと引っ張り上げてくれそう。ドコまでも高く、遥か頭上へと飛んで行けそうな。希望に満ちた気持ちにさせられる。心の内に眠ってたプラスの感情が溢れだしそうだ。強烈な光を浴びて自分まで発光しそう。
 


 「もう私、悔しい。本当の桑子さんを知らないのはあの方たちの方なのに、あんな風に言われて」
 
 「……うん」

 「だから皆さんに気付かせてやりましょうよ。本当の桑子さんは優しい人だって」

 「どうやって?」

 「決まってますわ。徹底抗戦。戦うのです」

 「戦う?」
 
 「えぇ。私にいい考えがあります」


 そう言って今城さんは悪い笑顔で自信満々に言った。逆転の発想。一層の事、皆さんのイメージ通り“性格の悪い女”になってやればいいのです、と。
 
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