黒を以て白を制す
「性格の悪い女?本当の悪役みたいな?」
「そう。腹黒く。そうすれば皆さん“こんな酷いことをする人じゃなかったのに”って疑問に思うでしょう?」
「以前の私を思い出して比べるのね」
「えぇ。そして比べたときに気付くはずです。“あれ?以前の桑子さんは別に悪い人じゃなかったな”って」
「なるほど……」
「後は元の優しい桑子さんに戻ればオッケーです」
「つまり悪いイメージを悪いイメージで取っ払うのね」
「はい。状況も状況ですし。多少悪さをやっても“自分が酷いことをやったから怒ってただけか”と都合良く解釈してくれますわ」
今城さんに言われ、少し頭の中で考える。それはありかも知れない。固定イメージを崩すには爆弾が必要。それも完全に崩すとなると結構強烈なやつが要る。
しかし、性格の悪い女か。本当の悪役ってどんなだろう……。漫画に出てくる高飛車キャラのような?それとも童話に出てくる魔女みたいな感じ?ヒーローものに登場する怪獣とか?いざ思い出そうとすると悪役がどんな性格で何をやってたか思い出せない。ヒロインのことはよく覚えてるのに。
まぁ、いいや。形にはこだわらなくとも。今まで通りすぎて行った性格の悪い女たちの真似をすればいいか。なんせ、やられた経験だけは無駄に豊富だ。何とかなる。後は言いたい放題、やり放題。思い付く限り好きにしてみればいい。
「黒を以て白を制す、だね」
「そうです。悪を滅ぼすために悪を。悪人には悪人です」
「悪を最大限に利用するのね」
「はい。皆が作った“桑子”のイメージを“ダーク桑子”で塗り潰しましょう」
サラッと企画でも提案するように話す今城さんに感心する。よくこんな作戦を思い付くなー。悪役ライフを楽しんでやろうとは思ってたけど、普通に文句を言い返すくらいのことしか考えていなかった。恐るべし。今城さん。
「何かありましたら私と伊那さんでカバーしますから。気持ちが整ったらさっそく決行なさってください」
そう言われ、粛々と頷く。どうなるか分からないけど、とにかくやってみよう。今の現状を打破するために。