松之木学園♥生徒会執行部
「誰だ?」
すると窓を開けた瞬間、奥にあった長ソファの辺りから声を掛けられた。低い男の声。反射的に顔をそちらに向ければ、金髪ピアスの厳つい男が眩しそうに目を細めて私を見ている。
うん。顔がいい。好みど真ん中の塩顔。彼が噂の澤田君で間違いないだろう。このトキメキが本物だと証明している。むしろ、そうであってくれなきゃ困る。じゃなきゃこんな場所に一人でいる男なんてお化けか不審者の二択だ。ちょっと怖い。
「あ、どうも。澤田君ですか?」
「そうだけど。誰だよ、お前は」
「1年5組28番。松戸菜々です!好きな食べ物はいちご大福。嫌いな食べ物は納豆です。よろしくお願いします!」
凄まれて若干パニック。ヘンテコな動きで自己紹介を済ませ、ペコリと頭を下げる。自分で言うのもなんだが、しどろもどろしちゃってかなり怪しい。スパイ、もしくは不審者。または昔ここで不慮の死を遂げた女生徒の幽霊だと思われているかも知れない。
「食べ物の好みまで聞いてねーし」
「折角なのでお伝えしておこうかな、と」
「ぜってぇ必要ねぇだろ。そんな情報」
「ですよねー」
「変な女」
「たまに言われます」
訝しげに眉を顰めた澤田君に向かって、ピクピクと頬を痙攣させながら「ははっ」と引き攣った愛想笑いを投げる。
だめだ。帰りたい。失敗したような気持ちでいっぱいだ。普段はもう少しまともなんだけど。緊張のあまり態度がかなりおかしくなっている。