松之木学園♥生徒会執行部

 「んー」

 「渋りますね……」

 「そりゃそうだろ」

 「何がそんなに嫌なんですか?」

 「言われた通りにやるのが嫌。命令されたくねーの」


 だからもう放っておいてくれ、と澤田君は至極面倒くさそうに眉を顰めて私に言う。迷っているくせにだ。メチャクチャ頑固。仕方ない。こうなれば奥の手を使おう。


 「わかりました。じゃあ、生徒会に誘うのは一旦ヤメにします」

 「一旦かよ」

 「いやぁね、実はコッチの話の方がメインなんですよ」

 「まだあんの?」

 「はい。澤田君の頭の良さを見込んでお願いしたいことがあるんです」


 そう言って私は制服のポケットから一枚の紙を取り出した。規則正しく問題の並んだ社会のテスト用紙。先日受けた中間テストのやつだ。赤ペンで書かれた点数は19点。今の私の実力である。


 「……やば。19点って」

 「でしょ。やばいんですよ。本当」


 ドン引きする澤田君にヘラヘラと締まりのない顔を向ける。

 何を隠そうこのヤンキー、見た目とは違って頭の作りはメチャクチャ優秀。テストをさせれば全教科95点以上。元々勉強は嫌いじゃないみたいで我が校で1番と言えるほど頭がいい。

 ついでに言うと私はいかにも勉強できそうな見た目をしているが、実際のところはメチャクチャ頭が悪い。あまりの悪さに小学生の弟が憐れんで『ギャップ萌えだね。姉ちゃん』といつもフォローを入れてくれる。


 「何だよ、活気時代って。ここの答えは石器時代だろ」

 「はは……。何となくニュアンスで」

 「こっちはセクハラの戦い?関ヶ原の戦いか?」

 「はい。恐らく」

 「フランシスコをフラスコと間違えるのは、まだわかる。でもさすがにエビウルはないだろ。ザビエルだから。こいつエビを売り歩いたりしてねぇから」

 「はぁ…」


 ボロボロの私のテスト内容にビシバシとツッコミを入れていく澤田君。クスクスと肩を震わせて何だか予想していた以上にウケている。ラッキーなのかショックなのか自分でもわからない。

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