松之木学園♥生徒会執行部
だから確かめるような気持ちで近くに居た女子に視線を送った。本当なの?って。そしたら肯定するようにガクガクと首を縦に振られた。更に全員が喉をゴクリと鳴らし、それが事実だとでも言うように小さく頷く。
そのまま黙って重なる澤田君の呆れた視線。なんだ。そっか。ただの私の勘違いだったっぽい。
「もー、紛らわしい。それならそうと早く言ってくださいよ」
「だから最初から勘違いだって何度も言ってんだろ!」
「だってまさか、クラス全員が澤田君を怖がっているだなんて夢にも思わなかったんですもん」
「はぁ?なんでだよ⁉」
「そりゃマジックを習いに私の元へ弟子入りしてくるくらいですし」
「おい、待て。俺はお前に弟子入りなんかした覚えはねぇぞ」
キョトンとした私に澤田君は目をカッ開いて、信じられないって顔をした。あれだけピーコの餌やりに夢中になっておいて否定するとは白々しい。確かにやり方を知りたいと頷いただけで弟子入りするとは一言も言ってなかったけど。
「あれ?違いました?」
「違う!お前のアホな回答をもっと見たいって理由だっただろ」
「あぁ、そう言えばそうでしたね」
忘れてた~と笑う私に澤田君は脱力したようにガックリと肩を落とす。その場にしゃがみ込んで、頭をガシガシと掻いて、本当に疲れたって表情だ。
そんな私達のやり取りを見ていた男子が「ぷはっ」と小さく笑いを吹き出した。その声を皮切りに他の生徒もゲラゲラと笑い始める。
「澤田が人に勉強を教えてるのか」
「しかも報酬がマジックって」
「だから授業に出てきたのな」
「おかしいと思った」
口々に意見を述べながら笑う3組の生徒たち。どうやらバチクソヤンキーな澤田君が他人に勉強を教えている、って事実が面白いらしい。
しかも、その報酬がマジックだし。中には事実を疑う生徒もいたが「実は彼、頭が良いんですよ」と、澤田君の参考書みたいなノートを見せたら「すげぇ」と、素直に感心していた。持ち主の澤田君には「勝手に見せるな」と怒られたけど。