松之木学園♥生徒会執行部
『愛でる会』
「そっか。良かったですね。クラスメートと打ち解けられて」
「いいちゃいいけど、何かな……」
「無駄に気を使われるよりは良いじゃないですか」
時は過ぎて放課後。体育祭の準備に向けて大忙しの生徒会室。クラス旗について書かれたプリントに目を通していた雄大が、昼間の出来事を話す澤田君を宥めなつつ柔らかい微笑みを浮かべる。
私に勉強を教えているとクラスメートに知られてから数時間、澤田君のクラスでの居心地は改善されたらしい。
そのおかげか昨日よりも表情が明るくなっていて心配していたコチラとしても嬉しい限り。菜々の所為で散々からかわれた!と愚痴られてはいるけども。
まぁ、何だかんだ文句を言いつつ、私が作った手作りピーコ弁当をあの空気の中で普通に食べてくれた澤田君は間違いなく良い人だ。
校長だって澤田君の雰囲気が丸くなってきたと大喜びしている。私達のミッションはかなり順調。しかし、だ。
「おらぁ、澤田ぁっ。ここに居るのは分かってんだぞ!」
「隠れてないで出てこいや」
「へいへい澤田くぅん!開けてよぉ!」
ドンドンドンと生徒会室のドアを叩く音。蹴り飛ばす音。ガチャガチャと揺らす音。激しい。
澤田君に構って貰いたい不良たちが闇金の取り立てなみに煩い。不測の事態に備えて我が生徒会室の扉は頑丈かつ、電子錠でロックをされていて絶対に開かないというのに、必死にこじ開けようとしている。
「澤田君のファンクラブの人たち毎日熱心すぎません?」
「ファンじゃねぇし」
「いやいや。あそこまで来ると、もはやファンでしょう。何としてでも澤田君に一発殴って貰おうと必死じゃないですか」
疲れたように溜め息を吐く澤田君にツッコミを入れつつ、苦笑いを向ける。
そりゃ授業に出たくないとか校舎に近寄りたくないって言い出すはずだ。毎日のようにこれじゃ無視をするのも相手をするのも大変。
私の肩に飛んできたピーコも『何よ!あの外に居る野蛮な人達は』と言いたげに唸っている。