松之木学園♥生徒会執行部
「愛されてますね」
「澤田君を愛でる会とか結成してそう」
「推し活が凄すぎる」
理央と小春と慶彦が好き勝手言いながらケラケラと笑う。仮にも襲撃されている最中なのに皆体育祭の看板の案を書いたりなんかして呑気だ。しかし、悠長にもしていられない。
「しょうがねぇ。黙らせてくるか」
やまないノックに痺れを切らしたのか、澤田君が溜め息交じりにイスから立ち上がる。殺気に満ちた顔をしちゃって、間違いなく物理的に口を利けなくする気だろう。
私としてはそれも致し方がないと言いたいところだけど、何と言っても【喧嘩をさせない】が校長から出された条件の1つでもある。よし、いけ。なんて素直には頷けない。
「まぁまぁ、澤田君。一旦、座ろうよ」
「そうだよ~。落ち着きなって」
呼び止めた私に便乗するように、それまで体育祭の予算計画書と睨めっこしていた会計の鈴花が顔を上げる。出ていこうとしていた澤田君は振り返って不貞腐れた顔を浮かべた。ついでに鈴花と一緒に睨まれる。
「落ち着けって言われてもなぁ」
「平気、平気。無視しておけばいいって」
「良くねぇだろ」
「良いんだよ」
食い下がる澤田君に鈴花は毅然とした態度で言い返す。そして彼女は徐に立ち上がると、生徒会室のドアに備え付けられた二つ目の電子錠の鍵を中からロックした。
ピピッと音を立てて、更に頑丈になった生徒会室のドア。実質、監禁状態。そんな行動に出た鈴花を澤田君は変なものでも見るような目で睨んでいる。理解できない、と言いたいんだろう。しかし、鈴花は折れない。