松之木学園♥生徒会執行部

『ツンキー現る』


 「おいコラ、待てや」


 生徒たちが行き交う体育館の前。着替えようと更衣室に向かっていた私をしゃがれた声のヤンキーが呼び止めた。振り返って姿を見れば、眉無し、腰パン、口にピアス。


 『スリーアウト。校則違反。生徒会室にGOです!』と叫び出したい気持ちを抑え、眼鏡のフレームを指で摘まんで押し上げる。


 どうしてだか殺気だった目で睨まれているが、気にする余裕はなさそう。それよりも上。ツンツンに立ち上げたヤンキーの髪の方へ意識がいってしまって。


 一体全体どうして彼はこの髪型をチョイスしたんだろう。まるで頭の上で静電気でも起こっているみたいだ。何故なのか物凄く気になるし、真剣に問い詰めたい。しかし、そんな気持ちを投げ捨てて、息巻く彼に呼び止めた理由を尋ねる。


 「何でしょう?」

 「お前、最近、よく澤田と絡んでる女だろ」

 「はい。そうですね」

 「あいつに用があるから、ちょい今から面かせや」


 素直に話を聞く姿勢を見せた私にツンツン頭のヤンキーことツンキーは鼻息荒く凄んでくる。


 「は?」


 いきなり絡まれて暫し茫然(ぼうぜん)。それが気に入らなかったのかツンキーは「ナメとんかゴラァ」と、眉を寄せて私にギャーギャー言ってくる。


 こういう場面でヤンキーが他人におでこを擦り付けてくるのは、いったいどうしてなんだろう?永遠の謎。もしかして牛への憧れ?くぅぅー!闘牛強ぇぇ!かっけぇー!俺も真似しよ!みたいな?


 『あん?コラ、あん?コラ』

 煩いのも不思議だ。首を上下に振る動きなんてまるでミステリー。


 そう思ったら同じヤンキーでも澤田君は一味違う。独特の色があると言うか彼にしか出せない味がある。凄むにしたってもうちょっとカッコいいし。


 いや、それよりもだ。澤田君に用があるなら直接会いに行けばいいのに。まさかアポ無しじゃ失礼にあたるとでも思ってたりする?自分みたいな半端もんはまだ澤田さんには直接会いに行けないッス、って?だからと言って私に同伴を頼まないで欲しい。澤田君の秘書じゃないんだけど。

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