身代わり同士、昼夜の政略結婚
がばりと体温が離れる。頭と腰は捕まえられたまま、できるだけ柔らかく微笑む。
「わたくしも、いつか殿下と直接お話したいと思っておりますの」
「……ありがとうございます。嬉しいです」
「まだ、すべてを外す勇気が出なくて……」
ですから、その。今日は。
「……一枚だけ、でしたら」
約束の期限まで、あと三週間。まだまだ重なったベールを取り払うには時間がかかりそうなのだけれど、少し前進したい。
「わたくし、自分ではどうしても恥ずかしくて仕方がないのです。……殿下が、外してくださいますか」
伺うと、殿下が少し身じろいだ。
「私の手元が誤るか勢いが余るかして、すべて外してしまったらどうするんです」
「あら、殿下はそのようなことはなさいませんわ。そうでしょう?」
そうっと手を重ねると、低い体温が混ざる。
「信じておりますわ、アステル殿下」
「ずるいなあ、あなたは。信じてくれてありがとう」
この布の先に殿下の顔があると思うと、何だか目が合いそうで、顔を上げられなくて、俯きがちに横を向く。
導いたベールの裾を、節の高い指が一枚だけ引っ掛けて、はらりと落とした。
「わたくしも、いつか殿下と直接お話したいと思っておりますの」
「……ありがとうございます。嬉しいです」
「まだ、すべてを外す勇気が出なくて……」
ですから、その。今日は。
「……一枚だけ、でしたら」
約束の期限まで、あと三週間。まだまだ重なったベールを取り払うには時間がかかりそうなのだけれど、少し前進したい。
「わたくし、自分ではどうしても恥ずかしくて仕方がないのです。……殿下が、外してくださいますか」
伺うと、殿下が少し身じろいだ。
「私の手元が誤るか勢いが余るかして、すべて外してしまったらどうするんです」
「あら、殿下はそのようなことはなさいませんわ。そうでしょう?」
そうっと手を重ねると、低い体温が混ざる。
「信じておりますわ、アステル殿下」
「ずるいなあ、あなたは。信じてくれてありがとう」
この布の先に殿下の顔があると思うと、何だか目が合いそうで、顔を上げられなくて、俯きがちに横を向く。
導いたベールの裾を、節の高い指が一枚だけ引っ掛けて、はらりと落とした。