身代わり同士、昼夜の政略結婚
「どうでしょう、少しは見えやすくなりますか」

「ええ、ほんの少しだけ」

「それはよかった」

「よかった、のですけれど、すごく恥ずかしい気分です」

「それは追々慣れていただきたいですね」


穏やかに言いながら、殿下は丁寧に畳んだベールを棚の上に置いた。ただの布を、尊重してくれるのが嬉しかった。


「が、頑張ります……!」


きゅっと握り拳を作ると、拳ごと手で包まれた。


再び引き寄せられて、低く吐息が聞こえる。


「頑張ってくれてありがとう。ミエーレ殿下は、体温が高いですね」 

「アマリリオ出身ですから。熱いですか?」

「いや、温かいなと思うくらいです」

「熱くないのでしたらよかった。アステル殿下はそんなに体温が高くないから、相対的に熱く感じたら大変だなと心配だったんです」


ご心配をおかけしました、と喉を鳴らして笑っている。くるくるした高い笑い声が、森で鳴く鳥みたいだった。
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