身代わり同士、昼夜の政略結婚
こちらの第一王女とあちらの第一王子は同い年で、それを理由に友好の証としたいということだろう。あちらの王女はまだどなたも幼いと聞く。
友好さえ示せれば幼くてもよいような気もするけれど、もちろん互いの候補は第一王女と第一王子である。
もうすでに婚約者のある身の上同士、それでは国が立ち行かぬと承知しながら、両国の威信をかけて、そう指定せざるを得ない。
政をするにあたって、初めからスペアでもいいなどとは言えないのだ。
「ソレイユお姉さまは太陽の愛し子、ましてや婚約者のある身です、それはあまりに……!」
悲鳴じみた高い声は、夢見がちな色をして幼かった。
ヘリアンサス、かわいい妹の第三王女に違いなく、先ほど一度は飲み込んだ言葉が止められなかったと見える。
「ヘリアンサス」
たしなめるような、静かな声がした。
太陽の愛し子──金の髪と向日葵の目の持ち主。ソレイユお姉さまの、大人びてよく訓練された、感情のにじまない声だ。
お姉さまの淡い茶色の目は、我が国のまばゆい日差しによって明るく透けているのでしょうね。
目の中に向日葵が咲くように、中心から外に向かって薄くなる、向日葵の目。アマリリオ王国の王族である証。
「わたくしを思ってくれてありがとう。でも、お父さまを困らせてはいけません。……わたくしは、お父さまにお任せいたします」
おそらく頭を下げたのだろう間があって、ひそやかなざわめきが一層大きくなった。
頭を下げたまま、白い視界を見る。頭の中で必死に算盤を弾く。
……先ほどお父さまは、同盟とおっしゃった。これは、好機だわ。
「恐れながら申し上げます」
「……ミエーレ、いかがした」
座らせてもらった椅子を下り、淑やかにカーテシーをすると、探るような声がする。しんと静まった広間の後ろまで聞こえるように意識して、声を張った。
「その同盟、わたくしでは代われませんでしょうか」
友好さえ示せれば幼くてもよいような気もするけれど、もちろん互いの候補は第一王女と第一王子である。
もうすでに婚約者のある身の上同士、それでは国が立ち行かぬと承知しながら、両国の威信をかけて、そう指定せざるを得ない。
政をするにあたって、初めからスペアでもいいなどとは言えないのだ。
「ソレイユお姉さまは太陽の愛し子、ましてや婚約者のある身です、それはあまりに……!」
悲鳴じみた高い声は、夢見がちな色をして幼かった。
ヘリアンサス、かわいい妹の第三王女に違いなく、先ほど一度は飲み込んだ言葉が止められなかったと見える。
「ヘリアンサス」
たしなめるような、静かな声がした。
太陽の愛し子──金の髪と向日葵の目の持ち主。ソレイユお姉さまの、大人びてよく訓練された、感情のにじまない声だ。
お姉さまの淡い茶色の目は、我が国のまばゆい日差しによって明るく透けているのでしょうね。
目の中に向日葵が咲くように、中心から外に向かって薄くなる、向日葵の目。アマリリオ王国の王族である証。
「わたくしを思ってくれてありがとう。でも、お父さまを困らせてはいけません。……わたくしは、お父さまにお任せいたします」
おそらく頭を下げたのだろう間があって、ひそやかなざわめきが一層大きくなった。
頭を下げたまま、白い視界を見る。頭の中で必死に算盤を弾く。
……先ほどお父さまは、同盟とおっしゃった。これは、好機だわ。
「恐れながら申し上げます」
「……ミエーレ、いかがした」
座らせてもらった椅子を下り、淑やかにカーテシーをすると、探るような声がする。しんと静まった広間の後ろまで聞こえるように意識して、声を張った。
「その同盟、わたくしでは代われませんでしょうか」