身代わり同士、昼夜の政略結婚
「よかった……」

「大丈夫ですよ」


笑いを含んだ吐息に、今さらながら、「手を貸してください」とお願いしてみた。

枕元で殿下を探すわたくしを慮って、優しい殿下が自ら手を取ってくれたとはいえ、許可を得ずに触れるのはよくない気がする。


どうぞ、と即答してくれた殿下の手は、冷たくて気持ちがいい。と思ったものの、よく考えてみたら、わたくしは今熱っぽくて、全身汗でベタベタなことに思い至った。


やっぱりわたくし、今は体調がよくないらしいわ。思考があちらこちらに散らばって、二転三転しているもの。


そろりと手を離す。


「ミエーレ殿下、どうされました?」

「アステルでんか」

「はい、なんでしょう」

「わたくし、汗をかいていて……」

「体調を崩されていますからね」


おずおず訴えるわたくしに、アステル殿下は当然のように頷いた。


「私は気にしませんが」

「わたくしは、気にします。だからやっぱり借りません」

「はい」


回らない呂律と頭で精一杯の断りを入れ、もぞもぞと布団を引き上げる。
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