身代わり同士、昼夜の政略結婚
「はい、『アマリリオ』」

「『オルトロス』」


問答無用で始めたら、きちんと続きが返ってきた。


爆笑しているものの、しりとりをしてくれるらしい。ノリがいい。


「ス、は考えておきましたのよ。『スターチス』」


必殺、サンドイッチ戦法。同じ文字の繰り返し。


「ス!? 『スターアニス』。……スターチスとは何ですか?」

「青いお花に混じって白いお花が咲く、不思議な一年草です。夜空に星が散らばったみたいで、とても綺麗なのですよ」

「あなたはしりとりまで上手いんですか?」

「ありがとう存じます、考えておきましたもの。スターアニスって何ですの?」

「星の形をした、甘い香りの香辛料です。オルトロスでは、香りづけによく使います」

「あら、嗅いでみたいですわ。スターアニス、またスですか。あなたもお上手ですね」

「ありがとう。……ミエーレ、まだ続けます?」


あまりのおかしな状況に、アステルが半目になっている。


「いえ、ここで手打ちといたしましょう」


にっこり微笑むと、今度こそ微笑みが返ってくる。調子が戻ったらしくてよかった。苦笑ぎみだけれど。
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