身代わり同士、昼夜の政略結婚
「アステル。あなたにとって、わたくしはずっと、ひなたでありたいと思います」
黒の国。すっかり見慣れた、月と星が浮かぶ空。
持参したベールはもう使わないけれど、記念に取っておきたくて、一つずつたたんで小さな棚に仕舞ってある。
ベールがなくとも目が開けられるほど、黒に染まった、日が差さない国。
その中で、わたくしはひなたでありたい。
あたたかくて、穏やかなもの。そうしてできれば、あなたの唯一になりたい。
アステルが、ふ、と笑った。金の輪を抱くその目が、優しい三日月に変わる。
「初めから、私のひなたはあなただけです」
愛しい夫が名前を呼んだ。
「ミエーレ。私はずっと、あなたのための星明かりでありたいと思います」
二つに分けた枯れぬ銀木犀と金木犀は、少し色褪せながら、互いの部屋に揺れている。
窓の向こうには煌々と月が輝き、さらさらと星が瞬く。何年も変わらぬ景色の隅で、燭台係が火の番をしている。
ふわりとほのかに甘い香りがした。蜜蝋が、甘く柔らかく、国中を照らしていた。
黒の国。すっかり見慣れた、月と星が浮かぶ空。
持参したベールはもう使わないけれど、記念に取っておきたくて、一つずつたたんで小さな棚に仕舞ってある。
ベールがなくとも目が開けられるほど、黒に染まった、日が差さない国。
その中で、わたくしはひなたでありたい。
あたたかくて、穏やかなもの。そうしてできれば、あなたの唯一になりたい。
アステルが、ふ、と笑った。金の輪を抱くその目が、優しい三日月に変わる。
「初めから、私のひなたはあなただけです」
愛しい夫が名前を呼んだ。
「ミエーレ。私はずっと、あなたのための星明かりでありたいと思います」
二つに分けた枯れぬ銀木犀と金木犀は、少し色褪せながら、互いの部屋に揺れている。
窓の向こうには煌々と月が輝き、さらさらと星が瞬く。何年も変わらぬ景色の隅で、燭台係が火の番をしている。
ふわりとほのかに甘い香りがした。蜜蝋が、甘く柔らかく、国中を照らしていた。