ひとつ屋根の下、先生とヒミツの研究 (短)
「確かに、今ごろバスに乗ってないとダメだね。でも、それは〝会う約束を本当にしていれば〟の話だよ」
「……え?」
まさか先生、今日の約束って、ウソなの?
じゃあ書いた論文は……どうするの?
混乱して、持っていた論文をバサリと落としてしまう。「あ」と、急いで拾おうとした。
だけど、その時。
見てしまった。
折り重なった紙が、どのページも真っ白なことを――
「せ、先生……論文は?」
「……」
「あんなに必死に書いてた論文は!?」
どうしてか、泣きたくなって。
泣きながら、大きな声を出した。
すると、
「ずっと前に出したんだ――辞表をね」
「……へ?」
訳が分からなくて。
だけど、先生の顔を見たら悲しくなって。
呆然としたまま、先生を見た。
すると――
「今日の門出は翠々香、君なんだよ」
✲*゚