ひとつ屋根の下、先生とヒミツの研究 (短)
*架千夜宇*
*架千夜宇*
三ヶ月前――
「架千くん、君の研究についてだが。獣人については、我が社にとっても、もちろん気になるところだ。
しかし、存在しないものを追い求めても、それは永遠に答えが出ない。そうだろう?」
「……」
研究には、金と時間がいる。
上の者が、こんな話を俺にしたということは……
獣人の研究に割く時間も金も惜しいから、俺が持つ天才的頭脳を使って、会社の利益になる研究に乗り換えろ、
という意味だ。
「はぁ、俺がしたいのは獣人の研究だってのに」
研究以外、俺はこれといって特技がない。転職といっても、就ける職種は限られる。
だけど、自分の「専門外」を研究するのも、本末転倒だろ。イヤイヤ研究したって、やる気なんて出るもんか。
「いっそ、辞めちまおうか」
はぁ、と。
新年早々、雪の降る日に、こんな気の滅入る話をしなくたっていいのに。
道路脇にあった長椅子に、溜息をつきながら腰かける。古びた木造が、ギッと嫌そうに音を出した。