ひとつ屋根の下、先生とヒミツの研究 (短)

「オレも嫌だってんだ……」


溜息をつく度に、真っ白な吐息は空中に消えていく。

俺の愚痴でさえも、しんしんと降り積もる雪の中に、静かに消えていくようだった。


「どうしようかねぇ……」と。

もう一度ため息をつこうとした、その時だった。


ドサッ


突然、目の前に現れた女の子。

その子はこんな寒空の下、コートも着ずに、薄着だった。

だけど俺が目を奪われたのは、格好よりも――


「耳と、しっぽ……?」


俺の声は雪にでもかき消されたか、女の子に届いてなかった。

女の子は涙を流しながら、手を使って必死に耳としっぽを隠そうとしている。


女の子のうろたえた様子を見る限り。
耳としっぽは、作り物では無い。
間違いなく本物だ――と直感した。


「すごい因果だ……」


会社に「意味の無い研究はするな」と三行半をつきつけられた今日、その言葉を覆す存在が現れた。

俺の研究、俺の人生――
閉じるには、まだ早いんじゃないか?
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