ひとつ屋根の下、先生とヒミツの研究 (短)

「この子を救ってこそ研究者。俺の今までの努力は全て、この子を助けるものだった――なんて。最高じゃん」


研究者を辞めるか継続するか。
その答えは、簡単に出た。


「俺は、やっぱり獣人を研究したい。ずっと興味を持っていたい。だから……そんな俺を否定する会社なんて、こっちから辞めてやるよ。

だけど辞めるのは、この子を人間に戻した後だ」


コツン、と。女の子に一歩近寄る。

女の子は怯えたらしい、細い肩が大きく跳ねた。


「ねぇ君、俺のところに来ない?
そして――俺に、君を助けさせて」

「……え?」


絶望の瞳の中に、僅かな光が灯って。その輝きは、真っ直ぐ俺に向かっている。

ものさしで引いたようなブレのない視線に、ドキリと心臓が動いた。

俺の「ドキリ」は、彼女を「研究対象」ではなく「可愛い女の子」と意識して反応したと……何となく分かっていた。

だけど、ダメ。

俺には研究があるから。
女の子を助けるっていう責任があるから。

恋だ愛だなんてのは、それからだ。
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