ひとつ屋根の下、先生とヒミツの研究 (短)

それに。

会社からは「早く舵を切れ」と言われている。悠長に研究している暇は無い。

だから、三ヶ月。

次の春を迎えるまでに必ず人間に戻してみせる、と。その誓いを胸に立て、会社に辞表を提出した。


だけどさ。

いくら大人って言っても、やっぱり我慢がきかなる時はあるものだ。

このまま一生、翠々香が俺のそばにいてくれないかなって――そんな大人気ないことを思ったりする事もあった。

君を自由にするために、俺は研究してるっていうのにね。

だから、そんな時は。

自分に喝を入れるために、君に酷な質問をした。

「獣人の自分は嫌い?」って。
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