ひとつ屋根の下、先生とヒミツの研究 (短)
だけど翠々香が、思い切り顔を歪めて嫌悪感いっぱいの声で「嫌!」と言ってくれたから。
正気に戻って、研究を続けることが出来たんだ。酷い大人だよ、俺って。だから必ず「救おう」と思った。
一日でも早く、人間に戻してあげようと。
それが君の「救い」であり、君への「償い」だったんだ。
――もう少しだからね
翠々香が人間に戻れるまで、もう少し。
同時に。
翠々香と過ごせるのも、あと少し。
もう少しなんだぞ、俺――なんて。
まるで自分に言い聞かせるように、何度も翠々香に言った。「もう少し、もう少し」って。
惨めな俺を一日ごとに重ねて、重ねて束ねて――そして、ようやく出来たんだ。
翠々香に「コレ」を渡す日が――。
✲*゚