ひとつ屋根の下、先生とヒミツの研究 (短)
「さくらの前で、そういう話は禁止っ」
「え~、俺の奥さんは照れ屋だね。ねー、さくら?」
「ねー?」
笑い合う夜宇さんとさくらを見て、心がほわっと暖かくなる。
「私の日常が、こんなに幸せだなんて……。あの冬は、未来を想像することすら出来なかったのに」
呟いた直後に、重なる手。
見ると、夜宇さんが私の手を包み込んでいた。
私を救ってくれた大恩人、好きな人、そして旦那さん。
何年経っても、あの時に芽生えた恋心は消えてなくて。こうして触れるだけでもドキドキしちゃう。
だから……困っちゃう。
そんなこと、されちゃあさ。
「さっきの、私も……賛成です」
「! うん」
顔を真っ赤にして俯く私の頭を、夜宇さんが撫でる。
そんな私たちを見て、さくらが「ままをいじめるなー!」と。かわいく頬を膨らませた。
「違うよ、さくら! パパは、ママが大好きってことをね、」
「さくらぱーんち!」
可愛いこぶしを受けて、わざと倒れたフリをする夜宇さん。
そんな私たち家族を、いつまでも桜の木が見守っていた――
❀ END ❀