こんな雨の中で、立ち止まったまま君は
二日後の雨の夜、
歩道橋の上に、小川さんは来なかった。
また風邪でもひいたのだろうか。
気になって仕事が手につかなかった。
僕らはもちろん、付き合っているわけじゃない。
あの時…キスはしてしまったけれど、
それから何かが始まったわけでもないし、変わってもいない。
俺のほうが一方的に小川さんを好いている…のかどうか自分でも正直まだ良く分からないけれど、
はっきりしているのは…
気になっているのは俺のほうだけだということだ。
俺は、彼女の行動にいちいち口を挟める立場にはいない。
そんな知り合い程度の男が何度も部屋に押しかけるなんて、迷惑な話だろう。
でも。
仕事が終わった俺の足は…やはり彼女の部屋へ向かっていた。
それは結局、
間違った訪問だったのに。