こんな雨の中で、立ち止まったまま君は

 二日後の雨の夜、

 歩道橋の上に、小川さんは来なかった。


 また風邪でもひいたのだろうか。

 気になって仕事が手につかなかった。


 僕らはもちろん、付き合っているわけじゃない。

 あの時…キスはしてしまったけれど、

 それから何かが始まったわけでもないし、変わってもいない。


 俺のほうが一方的に小川さんを好いている…のかどうか自分でも正直まだ良く分からないけれど、

 はっきりしているのは…

 気になっているのは俺のほうだけだということだ。


 俺は、彼女の行動にいちいち口を挟める立場にはいない。

 そんな知り合い程度の男が何度も部屋に押しかけるなんて、迷惑な話だろう。


 でも。


 仕事が終わった俺の足は…やはり彼女の部屋へ向かっていた。



 それは結局、


 間違った訪問だったのに。




< 127 / 280 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop