こんな雨の中で、立ち止まったまま君は
「美咲は君に……何を話した?」
「……何も。ただ……私が彼を殺した……と言って。それ以上のことは聞けなくて」
「そっか……」
飯島さんは何かを考えるように黙ってから、ライターを手にした。
紫煙が立ち昇り、空中に溶ける。
「深入りしないほうがいいと言ったはずだけど」
「……ええ」
「聞かなくてもいいんじゃないか?」
「いえ、聞かせてください」
「美咲が好きなのか」
「……はい」
「……聞いたところで、どうにもならないと思うけどね」
「でも教えて欲しいんです、彼女に何があったのか、どうして彼女は……殺したなんて言うんですか。どうして……」
―――雨に打たれるのか……
「……知りたいんです」
俺の言葉に、飯島さんはさっきと同じ顔で微笑んだ。
俺はそれを見て、手付かずだったグラスに口をつけた。
苦い液体が、喉を焼くようだった。