こんな雨の中で、立ち止まったまま君は

 4年間を無駄に過ごしてしまうのが怖かった。

 いや、そんなのは言い訳かもしれない。

 通うのが面倒になった、というのが本当の理由だ。


 興味のない授業を受けるために電車に乗るのも、

 親に仕送りをさせるのも、

 間に合わせのレポートを書くことも、試験も、

 全てが面倒だった。


 もちろん、中退することは親に反対された。

 けれど、一度ダメだと思ってしまうと、

 そのあとの気持ちはどうしたって上がらない。

 
 反対を押し切った俺は、2年に進学する前にやめたのだ。


 田舎に帰っても良かった。

 なのにこうして、ずるずるとこっちに居座ってしまっている。


 就職先を考えようと動き回ったこともあったけれど、

 そのうちそれも面倒になってしまった。


 バイト先のコンビニのシフトを増やしていくうちに、

 すっかりその生活が身についてしまっていた。


 結局それから2年間、俺はこのままだ。

 バイト代で何とか暮らしている。


 圭吾は3年になり、何だかんだと文句を言いながらもきちんと大学に通っている。

 突然大学をやめた俺を心配し、こうして半ば強引に酒に誘ったりして。


 人と会う機会がなければ、特段係わらなくてもいい。

 そんな俺の性格を理解して、外に引っ張り出してくれているのだろう、と思う。



 こんな俺でも、夢、みたいなものは一応持っていた。

 小説みたいなものも書いてみた。


 もう長い間手をつけていないけれど、

 自分で考えた話を書き溜めたノートがカラーボックスの隅に入っている。

 しかしどの話も完結まで持っていけてない。

 
 生活に追われて、時間が経つにつれ、その夢も薄らいでいった。

 第一、そんなに甘いものじゃない。

 少しばかり本が好きで、自分でも書いてみようか、程度のところから始まっただけだ。

 こんなのは、夢とも言えないだろう。


 結局俺は、全てが中途半端で、

 まともなことなど何一つできていないのだ。


 



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