こんな雨の中で、立ち止まったまま君は
夜になり、ふたりでコンビニへ買い物に出た。
冷蔵庫の中には、食事になるようなものが何も入っていなかったからだ。
外の空気はきんと冷えていた。
小川さんと自分が吐く息の白さが暗闇にはっきりと映る。
道の上は暗いのに、空のずっと高いところは吐いた息と同じような白さが広がっていた。
おにぎりやサンドイッチなどの軽食を買って、来た道を引き返す。
街灯の周りを羽虫のようなものがうごめいているように見え、
こんな季節にどうしてだろうと思いながら足を進めているうちに、そのもやもやとしたものが道全体に広がった。
「あ……」
「雪だ」
ふたり同時に空を見上げる。
来るときに空に広がって見えた白さは、この雪の群れだったのだ。
形になった白い雪は、はらはらと頼りない動きで舞い降りてくる。
「今年初ですね」
「うん」
頷く彼女の頬に、白い粒が降りてゆっくりと溶ける。
彼女の上の、温かな体温で。
小川さんは確かに、ここにいる。
彼女の時間は、ほんの少しでも動き出しただろうか。
俺のしていることは、何か少しでも意味を成しているだろうか。
そうであって欲しい。
そう願いたい。
白い華のように舞い降りる雪を眺めながら、ひたすらに思う。
彼女を救えるのは、自分でありたいと。