こんな雨の中で、立ち止まったまま君は


 雪は夜中まで降り続いた。

 明かりの落ちた部屋の中に、開いたままのカーテンの間から白い光が差し込んでいる。


 フローリングを伝ってベッドまで伸びる白い光は、

 同じように白い彼女の肌を横切って壁にまで届いていた。


 唇で首を這い、胸元にたどり着き、身をよじる彼女の背中に腕を回してその声を聞く。


 光に浮かび上がる白い身体を抱きながら、俺はいつのまにか泣いていた。


 彼女がここにいる。

 現実味を持ってこの場所にいる。


 あの日とはまるで違う確かな彼女の体温に、

 切ないほど、苦しいほど、

 胸が痛くて張り裂けそうなほどの幸せを感じていた。


 顔を上げると、小川さんの頬にも涙が伝っていた。


 零れ落ちる涙を唇ですくってやるのに、自分の流す涙がまた彼女の頬を濡らしてしまう。


 小川さんは両手で俺の頬を包み、同じしぐさで涙を拭った。


「藤本くん……」


 それから俺の唇をとらえると、両腕は首に回された。



 彼女が差しのべてくれたその手が嬉しくて、

 小川さんを抱いている間、

 止めることの出来ない俺の涙は、零れ続けた。



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