こんな雨の中で、立ち止まったまま君は
降り止まない雨。
しびれを切らした客は店を出て、通りを歩く人をかき分けるようにして駅方向へ消えていった。
店内の客が少しばかり少なくなったころ、
俺は、引き抜かれて乱雑になっている雑誌コーナーへ向かった。
「ったく」
手前の数冊は湿気とページ送りのせいでゆがんでしまっている。
この調子だと、これからまだ少しの間、雑誌コーナーは荒らされるだろう。
そう思った俺は手に取った雑誌をその場に戻し、朝方の片付けに回すことにした。
もう一度レジへ戻る。
つい最近入れ替えたばかりの業務用レンジは、
サイズの都合上、前の場所から数十センチずらした場所に置いてある。
寄りかかる場所をなくした俺は、宅配便の伝票類を詰め込んである入り口側の空きスペースに寄りかかった。
通りの人波はまだ続いている。
それほど広くない歩道だ。
傘の群れは、押し合うようにして何とか動いている。
歩道橋の上にも、いくつもの傘が連なっていた。
その動きを目で追っていた俺の視線が、ある一点で止まった。
たった一つだけ、動かない傘があった。
それは、いつかと同じようにそこにあった。
白く、儚い、
あの人の。
彼女と気づくまで……
いや、
ひと目でそれが、
小川さんだとわかった。