こんな雨の中で、立ち止まったまま君は
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翌日。
昼に近い時間に目を覚ました。
起き上がって伸びをする。
ほんの少し、体が重いような気がする。
カーテンを開き、窓を全開にした。
部屋に残るアルコールの匂いが少しずつ外に逃げていく。
向かいのアパートの上に広がる白い空には、
薄い灰色の雲が筋状に寝そべっていた。
今日も、雨になるかもしれない。
空気はまだ湿っていた。
寝起きの顔を緩く撫でてくる。
圭吾も奈巳も、ちゃんと帰っただろうか。
そんなことを考えているうちに体が冷えてきた。
手を擦り合わせながら吐いた息が、閉めた窓を丸く曇らせた。
今日は夜勤だ。
夜の10時まで時間がある。
とりあえず顔を洗い、着替えを済ませた。
昨日のアルコールとつまみがまだ胃に残っているのか、何となくムカムカする。
冷蔵庫から水を取り出し、一気に飲み干した。
ベッドに腰かけてしばらくぼんやりとテレビを眺めてみたけれど、
日中の番組はどれもつまらない。
立ち上がってパーカーを羽織った。
体の重さは気になったけれど、出かけることにした。
夜勤の日の日中にすることは大体決まっている。
アパートを出て数メートル歩いたところでもう一度玄関へ戻った。
邪魔になるので迷ったけれど、ビニール傘を手にしてから再び鍵を閉めた。
白い空に、灰色の雲。
昨日のように、急に雨にあうことにも成りかねない。
駅までの道、通りにはまだ水溜りが残っている。
一体誰が片付けるのか、ビラとティッシュのゴミは消えていた。
昨日の雨のせいで、つま先が湿ったままのスニーカーの足を前に運びながら、
俺はいつもの図書館へ向かった。