こんな雨の中で、立ち止まったまま君は

 時間は静かに過ぎていく。

 2杯目のウイスキーを頼んだ飯島さんは、けれどそれに口をつけることをせず、握りしめるようにして両手でグラスを包んでいた。


 溶けだした氷が、からりと音をたてる。

 グラスを持ちあげた飯島さんはゆっくりと一口だけ飲み、それから煙草に火をつけた。


 彼が俺を呼び出したということは、小川さんのこと意外にないだろう。

 ふと、雨の中に消えた小川さんの後ろ姿を思い出した。

 あの日、あの場所に彼女が久しぶりに現れたのはなぜだろう。

 その時、飯島さんはどこで何をしていたのだろう。

 喧嘩でもしたのだろうか。


 それよりも、今日のこの呼び出しは何なのだろう。

 まさか、突然結婚するとでも言うのだろうか。

 小川さんが図書館をやめたのも、ひょっとしたらそれが理由なのかもしれない。


 どんな話が飛び出すにしろ、もう俺はそれを受け入れるしかないのだ。


 
 早くこの場から立ち去りたい。

 もう、苦しむのはたくさんだ。

 今夜だって、本当は断りたかった。

 二人がうまくやっているのであれば、

 もうこれ以上、俺に関わってほしくない。



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