こんな雨の中で、立ち止まったまま君は



 ―――会いたかった。


 ずっとずっと、会いたかった。



 俺は右手を伸ばし、そこに精いっぱいの想いを込めて、彼女の頬を流れる涙をぬぐった。



 目に涙をいっぱいに溜めて、それでも微笑もうとする彼女は、

 頬に添えられた俺の右手に自分の左手を重ね合わせた。



「きっと来てくれると思ってました」

「うん」

「でも、不安のほうが大きかった。気づいてくれないかもしれないと思って」

「うん」

「……良かった。気づいてくれて。来てくれて」

「うん」

「ありがとう、小川さん」

「……うん」

「ありがとう……」

「……うん」

「……ありがとう」



 何度もうなずく彼女の頬を、今度は両手で包んだ。


 子どものように鼻をすする彼女の泣き笑いの顔が、たまらなく愛おしい。





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