こんな雨の中で、立ち止まったまま君は

 人には進むべき道がある、

 以前はそんな信念みたいなものを持っていたはずだった。


 なのに。


 入った脇道が、

 くった道草が、

 いつのまにか俺の本道になってしまっている。


 俺はこのまま、

 今の道を当てもなく進んでいくことになるんだろうか。


 元の道へ戻る方法も見失ったまま、

 進むべき道を探す努力もしないまま。


 そのうち、今まで歩んできたはずの道のりをも忘れてしまうんだろうか。


 まあいい。

 俺の道のりなんて、これまでだって大したものじゃなかった。


 洋服も音楽も、周りが「いい」と言えば自分もそう言って手をつけた。

 アルコールも女も、流されていつのまにか覚えていた。


 せめて大学くらい、自分の興味に従って選ぶべきだった。

 なのに安全を選んで気持ちに嘘をついた。


 その嘘ですら、形にできなかった。

 放棄した。


 その結果がこれだ。


 時々怖くなる。

 その度に言い訳を繰り返す。


 面倒だから、のひと言で片付けて。



 
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