こんな雨の中で、立ち止まったまま君は
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3日ぶりの雨だった。
といっても今年の秋は雨が多い。
つかの間青空が広がったとしても、
ブロック塀の雨染みが消えきらないうちに、次の雫が空から落ちてくる。
そんな秋だった。
また今夜もぱらぱらと、雨粒が通りを埋め始めていた。
業務用レンジの乗ったカウンターに寄りかかりながら、
自動ドアの向こうをぼんやり眺める。
一台の車のヘッドライトが雨足を照らし出し、
ゆっくりと暗闇に紛れていった。
大通り、とはいえない道路沿いに建つこのコンビニは、
夜も9時を過ぎると客足も遠のく。
店の中には、2分ほど前に入ってきた客の男がひとりいるだけだ。
カップ麺の陳列棚の前でさっきからずっと迷っている。
やがてひとつを手にしてレジへやってきた男は、
顔を上げもせずに財布ばかりを覗き込んで、カウンターに小銭を散らばせた。
「ありがとうございました」
機械的に言葉を発して後ろ姿を見送る。
数秒間開いた自動ドアからは、
雨に濡れて濃さを増したアスファルトの匂いが流れ込んできた。