こんな雨の中で、立ち止まったまま君は

 10時10分前に交代のバイト生がやってきた。

 
「おはようございまーす」


 それほど規則の厳しくないこのコンビニは、

 茶髪というよりも金髪に近いバイト生が多い。

 店長も黙認しているというか、大して興味がないようだ。


「また今夜も雨っすね」


 ジーンズの裾を少し濡らしたバイト生の田中は、

 俺の前をするりと通り過ぎてスタッフルームに消えた。

 雨に濡れたスニーカーの靴跡が、その後に点々と続いている。


 田中がレジに立つまでの10分間、

 とりあえず陳列棚の間を縫いながらフェイスアップをして歩く。


 土曜だからだろうか、

 今日はアルコール類が売れている。


 バックルームの裏から缶ビールとチュウハイを補充する。

 缶の隙間からレジを覗き込むと、

 頭をかきながらあくびをする田中がレジに出てくるところだった。


「眠そうだな」


 声をかけながら戻ると、田中はへへっと笑いながら今度は胃をさすった。


「二日酔いなんっすよ」

「二日酔い?」

「昨日合コンだったんっす。でもハズレ。みんなブスだし。愛想よくねーし。行かなきゃよかった」

「ふーん」

「あまりにもつまんなかったんで、ガンガン飲むだけ飲んで。そしたら今日気持ち悪いんっす」

「寝るなよ、仕事中に」

「自信ないかも」

「おい」


 へらへらと笑う田中の頭をこついてから、俺はスタッフルームに戻った。




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