こんな雨の中で、立ち止まったまま君は
目を覚ました時にはもう昼を過ぎていた。
体を持ち上げるとあちこちが痛んで、
額に手を当てると面白いくらいに熱かった。
寒気がする。
暖房をいれずにいる安アパートの部屋には、
どこからか隙間風が入り込んでくる。
首筋から布団の中に入り込む空気が、いつも以上に冷たく感じられた。
何とか体を動かしてファンヒーターのスイッチを入れた。
カーテンを開いて外を見ると、灰色の空がどんよりと広がっていた。
辺りは乾ききらない雨に覆われたままで、しんと静まり返っている。
降り出すのに、そう時間はかからないような空色だ。
ファンヒーターが動き出してしばらくすると、
微かに窓が湿るくらいの暖かさが部屋に広がった。
体の表面に触れてみるとふわふわとした感覚しかなく、
体温計で熱を測ると、平熱より2度以上高かった。
「まいったな」
完全に風邪をひいてしまったらしい。
圭吾と奈巳に会った日からおかしいとは思っていたけれど、
昨日の雨が決定打となったようだ。
今夜も夜勤が入っている。
それでも何とかなるだろうと顔を洗い、着替えをし、テレビをつけてみたけれど、
動けば動くだけ体力が消耗されていくだけだった。
あと数時間では体調の回復は見込めないと判断した俺は、
仕方なく店長へ連絡をいれた。
電話越しの店長の声は何か言いたそうな雰囲気だったけれど、
俺が咳き込むと、諦めたように電話を切った。
これからバイト生の手配をする店長のことを考えると少し申し訳ない気持ちにもなったけれど、
休めることに、正直ほっとした。
風邪抜きにしても、何だかひどく疲れていた。