こんな雨の中で、立ち止まったまま君は
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電話の最中に咳き込んでしまったので、
病人を装って芝居でもしたような気分にもなっていたけれど、
実際、携帯をソファに放り投げたあとも咳はしばらく続いた。
水を飲んで落ち着こうと思い、
冷蔵庫の扉に手をかけたときに玄関のチャイムが鳴った。
滅多に鳴らされることのない音が部屋に響くと、意味もなく緊張してしまう。
こんな平日の昼下がりに一体誰が来たのだろうと首をひねってはみたものの、
どうせ新聞か宗教の勧誘だろうと思い込むようにして無視していると、
ピンポーン……
もう一度チャイムが鳴らされた。
扉に頭を向けるとズキリと頭が痛んだ。
「ちっ」と舌打ちをして覗き穴から外を見ると、
そこには意外な人物が映りこんでいて、
俺は体のダルさも忘れてしばらくその場で放心していた。
コンコン、と小さくノックする音がした。
その音に我に返った俺が戸惑いながらゆっくりと扉を開くと
「こんにちは」
そこには小川さんが立っていて
「ごめんなさい、突然に」
俺が声も出せずに突っ立っていると、
「あの、昨日のお礼にと思って」
そう言った彼女は困ったような顔で微笑んだ。