こんな雨の中で、立ち止まったまま君は
金曜の夜、圭吾からのメールが届いた。
いつもの呼び出しだ。
今日もまた長くなるのだろうと返信を渋っていた俺だったけれど、
最後に飲んだ日からだいぶ時間も経っていたので付き合うことにした。
「最近どうよ?」
既にほろ酔い加減の圭吾は、レポートも一段落したとかで表情が絵に描いたように晴れやかだ。
もっともコイツは、何があってもこの調子なのだが。
「どうって?」
「何か変わったこととかねーの?」
焼き鳥とビールを交互に流し込む圭吾の姿を見ながら、
別に、と言いかけて小川さんの顔が浮かんだ。
「ん? 淳、今なんかあったって顔した?」
こちらに話を振ってもすぐに自分の話題に持っていってしまう圭吾にしては珍しく俺の僅かな反応に気づいたらしい。
「いや、別に」
「いや、何かあったろ。今ちょっと止まったし」
片手に持った鳥皮を歯に挟んだ圭吾は、
「たまには淳の話が聞きたいなぁ」
一気に串を引き抜いてからテーブルに身をのりだした。
「お前、田中にそっくりだな、その顔」
「田中? 誰それ?」
「バイト先の学生。お前みたいに良く喋るヤツ」
「喋るって。まあ、喋るほうだけど。で、何かあった?」
口を動かしながら目を輝かせる圭吾が俺の言葉を待っている。
その姿に呆れながら俺は、
小川さんのことを話そうかどうか迷っていた。