こんな雨の中で、立ち止まったまま君は
昨日の朝から降り続いていた雨は、今日の昼になってようやく上がった。
青空になる一歩手前で諦めたような色の空が窓の外に広がっている。
本は膝から床に落ちていて、
5分くらいだと思っていた眠りは、時計を確認すると二時間以上が過ぎていた。
湿った感じのする体をシャワーでさっと洗い流してから、
とりあえず何か食おうと開けた冷蔵庫のなかを見てため息が漏れた。
「ちゃんと食べてくださいね」
後ろから小川さんの声が聞こえたような気がして振り向いてみたけれど居るはずもなく、
青いソファに脱ぎ捨ててあるダウンジャケットが目に入っただけだった。
眠っていればあっという間だった時間も、
時計とにらみ合っている状態ではまるで進まない。
日曜の午後を刻む針は、もどかしさを感じるほどにゆっくりだ。
ソファに腰掛けながらぼんやり眺めている秒針が周回を重ねるたびに雨の匂いが増していくようだった。
小川さんと並んで歩いたアスファルトの、あの匂いが。
借りてきた2冊の本のうち、読み終わっていたほうの青い表紙を手に取った。
口実と言えばそれまでだけれど、
図書館に行く理由はあるわけだ。
昨日、どうして歩道橋に来なかったのか。
それを聞くつもりはないけれど、
何か理由が分かるかもしれない。
いや、
それよりもりむしろ、
―――彼女に、会える
その時の俺は、気づかないふりをしていたけれど、
きっと、
その気持ちの方が大きかった。