こんな雨の中で、立ち止まったまま君は

-3-


 上りの電車に乗って一駅目、

 つまり俺のバイト先のコンビニのある駅に、小川さんの住んでいるアパートがある。


『私も電車で一本です』


 あの日小川さんと図書館のある駅で別れた時にはぼんやりとしていて気づかなかったけれど、随分近いところに彼女は住んでいたのだ。


 斉藤さんにもらった住所を頼りに、

 コンビニとは逆の東口を出てからしばらく辺りをさまよった。


 住所とアパート名だけで彼女の部屋を探すことは、思っていた以上に大変なものだった。

 同じようにして俺のアパートを訪ねてきた小川さんに改めて感謝した。

 すぐに分かったような事を言っていたけれど、

 きっとたどり着くまでにそれなりの時間はかかったはずだ。


 それなのにわざわざああして見舞いに来てくれたのだ。


 寒空の下、俺は必死で彼女のアパートを探して歩いた。

 電柱や看板に記された番地を見ながら行ったり来たりを繰り返し、

 ようやく一軒のアパートにたどり着いた頃には、街灯の明かりがちらちらと灯り始めていた。


 おそらく、まともに歩けば駅から20分程度の道のりだろう。

 なのに俺は1時間以上もかかって小川さんの部屋の前にたどり着いた。

 寒いはずのに、背中に薄っすらと汗をかいているのが分かった。


 静まった細い道の脇に建つ彼女のアパートは、お世辞にも綺麗とは言えない外観だった。


 けれど、築年数でいえば俺のアパートよりも断然新しいだろう。

 外壁や、階段の造りなんかからもそれは分かる。


 どこか寂しげにひっそりと佇む建物は、彼女のひかえめで物静かそうな、そんな雰囲気にぴったりだと感じた。




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