姉の身代わりに
妖艶な姉に対して、どこかみすぼらしい妹。癖のある赤茶の髪、沼の底を思わせるような深緑色の瞳。ぱっとしない顔立ち。
弟のエリオットも、エリンによく似ていて整っている顔立ちをしているのに、リーゼルだけ似ていない。
そんなリーゼルが、姉のエリンと共に父親から呼び出されたのが、ほんの十数分前。
黒檀色の執務用の机を前にでっぷりと座っている父親を前に、リーゼルは姉の少し後方に立って話を聞いていた。
その机の上には書類が二枚、並んでいる。
一枚は今、エリンが乱暴に置いたためか向きが斜め四十五度に傾いていた。
「お父様、私は知っているのよ? あのブレンダン王太子殿下の婚約者も、このマキオン公爵家から出すように言われていることを。そちらのほうこそ私に相応しい話ではないのかしら?」
「だが、ブレンダン王太子殿下の婚約者にはリーゼルをというのが陛下の考えだ」
「なんですって? この私がブレンダン王太子殿下には相応しくないとでも? むしろ、私のほうがマキオン家の正統な血筋でしょ?」
ぴしっと置かれていたもう一枚の書類を、エリンは乱暴に手に取る。
「陛下はブレンダン王太子殿下とお前との年を気にしているようだ。お前のほうが一つ年上だからな。だったら、年下のリーゼルを、と希望されたのだ」
「はぁ? 年のせいなわけ?」
エリンの本音が漏れた。こめかみがヒクリと動いている。
「嫌よ」
弟のエリオットも、エリンによく似ていて整っている顔立ちをしているのに、リーゼルだけ似ていない。
そんなリーゼルが、姉のエリンと共に父親から呼び出されたのが、ほんの十数分前。
黒檀色の執務用の机を前にでっぷりと座っている父親を前に、リーゼルは姉の少し後方に立って話を聞いていた。
その机の上には書類が二枚、並んでいる。
一枚は今、エリンが乱暴に置いたためか向きが斜め四十五度に傾いていた。
「お父様、私は知っているのよ? あのブレンダン王太子殿下の婚約者も、このマキオン公爵家から出すように言われていることを。そちらのほうこそ私に相応しい話ではないのかしら?」
「だが、ブレンダン王太子殿下の婚約者にはリーゼルをというのが陛下の考えだ」
「なんですって? この私がブレンダン王太子殿下には相応しくないとでも? むしろ、私のほうがマキオン家の正統な血筋でしょ?」
ぴしっと置かれていたもう一枚の書類を、エリンは乱暴に手に取る。
「陛下はブレンダン王太子殿下とお前との年を気にしているようだ。お前のほうが一つ年上だからな。だったら、年下のリーゼルを、と希望されたのだ」
「はぁ? 年のせいなわけ?」
エリンの本音が漏れた。こめかみがヒクリと動いている。
「嫌よ」