姉の身代わりに
8.姉(3)
☆☆☆

「それにしても、エリンは本当にひねくれているよね」
 ブレンダンが隣で笑っている。
「どういうこと?」
「自分を忘れたリーゼルが悔しくて、思い出させるために意地悪していただなんて。その割には他の子がリーゼルをいじめようとすると、庇っていたくせに」
「仕方ないでしょ。私はあの母親の娘なんだから」
 エリンは、自分がリーゼルの母親の娘でないことが悔しかった。
 だから、あの母親の娘であるリーゼルが羨ましくて憎らしかった。
「エリンはエリンだ。誰の娘であろうと関係ない」
 ブレンダンはエリンが優しい人間であることを知っている。それを知る人間は自分だけで充分だ。他の男が彼女の優しさに気づいて、彼女に興味を持ってしまっても困るから。
 だからブレンダンは、学院時代に悪女と影で囁かれていたエリンを庇うようなことはしなかった。自分にはそれだけの力があるとわかっていたにもかかわらず。


【完】
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