姉の身代わりに
2.妹(1)
☆☆☆
ブレンダン王太子の婚約発表のパーティが開かれる。
その婚約者はもちろんマキオン公爵家の長女エリンである。
婚約者に決まってからというもの、エリンは毎日のように王宮へ足を運んでは、さまざまな教育を受けていた。ああ見えても、エリンは根が真面目なのだ。
そしてリーゼルも、彼らの婚約発表のパーティに婚約者と共に出席する必要があった。
もちろんエリンの妹という立場と、彼女の婚約者があのオーガスト・キャスリックであるからだ。
あの後、二人の婚約異議の申し立ても問題なく通り、お互いの婚約者を入れ替えた書類が送られてきた。それによって、二人の婚約が正式に決まった。
このような華やかなパーティに出席するのは、リーゼルにとって苦痛以外の何ものでもない。
今までは近くにエリンがいて「あなたは壁の花にでもなっていなさい」と、壁側に彼女を誘い出すと飲み物を押し付け、エリン自身は人の輪の中へと消えていく。
リーゼルはそんな姉の姿を見送りながら、誰からも声をかけられずにその場をやり過ごしていた。
だが今日は違う。
隣にオーガストという婚約者がいる。無口な彼はどこか近寄りがたい雰囲気がある。鋭い鈍色の瞳も、黒紅色の髪も、人を寄せ付けないような何かがあった。
リーゼルは隣に人がいることに慣れていない。ましてその彼と腕を組むなんて、緊張のあまり心臓が激しく音を立てている。
小さく息を吐くと、どうやらオーガストに気づかれたようだ。
ブレンダン王太子の婚約発表のパーティが開かれる。
その婚約者はもちろんマキオン公爵家の長女エリンである。
婚約者に決まってからというもの、エリンは毎日のように王宮へ足を運んでは、さまざまな教育を受けていた。ああ見えても、エリンは根が真面目なのだ。
そしてリーゼルも、彼らの婚約発表のパーティに婚約者と共に出席する必要があった。
もちろんエリンの妹という立場と、彼女の婚約者があのオーガスト・キャスリックであるからだ。
あの後、二人の婚約異議の申し立ても問題なく通り、お互いの婚約者を入れ替えた書類が送られてきた。それによって、二人の婚約が正式に決まった。
このような華やかなパーティに出席するのは、リーゼルにとって苦痛以外の何ものでもない。
今までは近くにエリンがいて「あなたは壁の花にでもなっていなさい」と、壁側に彼女を誘い出すと飲み物を押し付け、エリン自身は人の輪の中へと消えていく。
リーゼルはそんな姉の姿を見送りながら、誰からも声をかけられずにその場をやり過ごしていた。
だが今日は違う。
隣にオーガストという婚約者がいる。無口な彼はどこか近寄りがたい雰囲気がある。鋭い鈍色の瞳も、黒紅色の髪も、人を寄せ付けないような何かがあった。
リーゼルは隣に人がいることに慣れていない。ましてその彼と腕を組むなんて、緊張のあまり心臓が激しく音を立てている。
小さく息を吐くと、どうやらオーガストに気づかれたようだ。