母親代わりの不遇令嬢は、初恋の騎士団長から求婚される
エリーサ・リンナはこのゴーゼブルホ王国のリンナ子爵の娘である。
そのエリーサが二十六歳という完全に婚期を逃し、行かず後家に両足を突っ込んでいるような状態になっているのは、この子爵領がけして裕福ではない、というところに起因していた。
リンナ子爵も根が真面目な人間であるため、贅沢な暮らしをしているわけでもないし豪遊しているわけでもない。だが、真面目な人間であるが故、融通の利かないところもあり、真面目貧乏に陥っているのだ。
それを影ながら支えているのが子爵夫人、ではなく彼の娘のエリーサであった。残念ながら子爵夫人は四人目の子を産んだ後、産後の肥立ちが悪く息を引き取ってしまった。このときエリーサは十二歳。弟は二歳、そして生まれたばかりの双子の弟たち。父親が新しい母親を迎えるまでは、自分が弟たちの母親代わりにならなければ、と思うには充分すぎる理由であった。
それに長男のオトマルにはこのリンナ子爵家を継ぐために、王都にある学院へと通わせているし、双子の弟のイントンとエントンにも十分な教育を。そのため、本来であれば社交界シーズンに王都の別邸で過ごす間もこのリンナ領に居座って、酒造業の方に精を出す始末。となれば、遥かに出会いは遠のき、現在に至る。
「姉さんもそろそろ社交界に出てみたらどうだい?」
そう言い出したのは、今年十六歳になったオトマルである。休日を利用して、王都からこの子爵領に帰ってきたところだった。
「無理ね。そもそも社交界デビューをしていないし。それに、この年でデビューなんて今さらでしょう?」
社交界デビューする余裕すらなかった。不遇といってしまえばそれまでかもしれないが、エリーサ自身は気にしていない。
そのエリーサが二十六歳という完全に婚期を逃し、行かず後家に両足を突っ込んでいるような状態になっているのは、この子爵領がけして裕福ではない、というところに起因していた。
リンナ子爵も根が真面目な人間であるため、贅沢な暮らしをしているわけでもないし豪遊しているわけでもない。だが、真面目な人間であるが故、融通の利かないところもあり、真面目貧乏に陥っているのだ。
それを影ながら支えているのが子爵夫人、ではなく彼の娘のエリーサであった。残念ながら子爵夫人は四人目の子を産んだ後、産後の肥立ちが悪く息を引き取ってしまった。このときエリーサは十二歳。弟は二歳、そして生まれたばかりの双子の弟たち。父親が新しい母親を迎えるまでは、自分が弟たちの母親代わりにならなければ、と思うには充分すぎる理由であった。
それに長男のオトマルにはこのリンナ子爵家を継ぐために、王都にある学院へと通わせているし、双子の弟のイントンとエントンにも十分な教育を。そのため、本来であれば社交界シーズンに王都の別邸で過ごす間もこのリンナ領に居座って、酒造業の方に精を出す始末。となれば、遥かに出会いは遠のき、現在に至る。
「姉さんもそろそろ社交界に出てみたらどうだい?」
そう言い出したのは、今年十六歳になったオトマルである。休日を利用して、王都からこの子爵領に帰ってきたところだった。
「無理ね。そもそも社交界デビューをしていないし。それに、この年でデビューなんて今さらでしょう?」
社交界デビューする余裕すらなかった。不遇といってしまえばそれまでかもしれないが、エリーサ自身は気にしていない。
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