母親代わりの不遇令嬢は、初恋の騎士団長から求婚される
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 エリーサがパーティーへ出席するために王都の別邸で過ごすことを、父親は反対しなかった。むしろ、酒造については自分にまかせて、王都での生活を堪能してこいとまで言う始末。
 おそらく父親も、行かず後家に両足を突っ込んでいる娘のこれからのことを心配しているのだろう。それでも無理に縁談をもってこようとしないのは、彼女を手放したくないからなのか。
 父親なりの葛藤を感じるところでもある。
 エリーサの弟であるオトマルは、この別邸から学院へと通っていた。来年になれば双子の弟のイントンとエントンもこの別邸から学院へと通う予定だ。
 そうなるとあの本邸にはエリーサだけになる。それはそれで寂しいもの。
 別邸に来てからというもの、エリーサは時間を持て余していた。彼女をお茶会などに招待してくれるような知人はいない。
 カウフマン侯爵夫妻が、領地が隣接しているために顔馴染という程度。そのカウフマン夫人が、エリーサが王都に出てきたを喜んで、一度お茶会に招待してくれたくらいだ。
 と、同時に、今まで社交界に一切参加してこなかったエリーサを案じて、手取り足取りその世界について、を教えてくれる。
 母親のいないエリーサにとっては、有難い教育であった。
 また、パーティーに着るためのドレスについても助言を与えてくれる。デビューらしきデビューはしていないので、さらっと国王に挨拶をすればいい、本来であれば白のドレスだが、年が年であるため落ち着いた色合いのほうがいい、等。
 このようなパーティーとは一生縁が無いと思っていたエリーサであるが、こうやって世話を焼かれるのも、まるで母親がいるようで嬉しかった。
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