母親代わりの不遇令嬢は、初恋の騎士団長から求婚される
 そうやって着々とパーティーのための準備が進む中、あの弟はパーティー三日前にして信じられないようなことを口にしたのだ。
「ごめん。姉さん。やっぱり、その日、エスコートできなくなった」
「え?」
 あんぐりと口を開けて弟を見つめることしかできない。だが、ふと我に返る。
「わかったわ、仕方ないわね。だったら私は明日、領地に戻るわ」
「駄目だよ。僕が言っているのは僕が姉さんのエスコートができなくなったっていうことだけなんだから。だからさ、姉さんのエスコートは他の人に頼んだんだ。もちろん、快く引き受けてもらえたから、姉さんはその人と一緒にきちんとパーティーに出席して。それにドレスだって準備したんだし」
 わざわざどこからか、オトマルが調達してきたドレス。何気にカウフマン侯爵の助言が行かされているような落ち着いた色合いのデザインだった。
「そうなの?」
 本当にパーティーに出席していいのか、という確認を込めて尋ねれば、オトマルは「そうだよ」と頷く。
「じゃ、とりあえずパーティーが終わるまではここにいるわね。誰がエスコートしてくださるのかわからないけれど、来たら行くし、来なかったら行かないわ。というよりも行けないわね」
「わかった。姉さんが絶対にパーティーに参加できるように、エスコート役にはしっかりと頼んでおくから」
「オトマル。あなた、どうしてそこまでして私をパーティーに参加させたいわけ?」
「どうしてって、せっかくここまで来たんだから。参加しなかったらもったいなくない? カウフマン侯爵家なら、喜んで姉さんのエスコートを引き受けてくれると思うんだ」
「でも、それって、おばさまに悪くないかしら?」
「いや、カウフマン夫人も喜んでくれると思うよ?」
 そういうものなのだろうか。
 エリーサは弟の言葉に渋々と納得した。

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