母親代わりの不遇令嬢は、初恋の騎士団長から求婚される
◇◆◇◆
オトマルはパーティーの準備で忙しそうだった。エスコートできないと言ったのも、王太子殿下の同級生で、さらに学院の生徒会長という役を担っているためで、あちら側――つまりパーティーを催す側の人間となってしまったためである。
そんなこと、このパーティーが催される段階でわかっているようなことなのに、それすら気づかなかった弟の鈍感さをエリーサは心配してしまう。
「エリーサ様、カウフマン侯爵家の方がお見えになっております」
(あら、カウフマンのおじ様が?)
それでも朝から使用人たちがああでもないこうでもない、とエリーサのことを一生懸命着飾らせてくれたことが、無駄にならなくて良かったなと、ほっと胸を撫でおろした。
「お待たせしました、カウフマンのおじ……」
そう言いかけて、言葉を呑み込んでしまったのは、そこにいたのがカウフマン侯爵ではなく、息子のブロル・カウフマンであったからだ。
「ブロル……。どうしてあなたがここへ?」
「それはもちろん、君のエスコートのために……」
ブロル・カウフマン。年はエリーサの五つ上。もちろん、カウフマン侯爵夫妻の嫡男。次期カウフマン侯爵。艶やかな黒髪を後ろにビシッと撫でつけている彼は、エリーサの知っている彼とも雰囲気が異なった。だが、セルリアンブルーの瞳だけは昔から変わっていない。
エリーサはこの男が大の苦手だった。
オトマルはパーティーの準備で忙しそうだった。エスコートできないと言ったのも、王太子殿下の同級生で、さらに学院の生徒会長という役を担っているためで、あちら側――つまりパーティーを催す側の人間となってしまったためである。
そんなこと、このパーティーが催される段階でわかっているようなことなのに、それすら気づかなかった弟の鈍感さをエリーサは心配してしまう。
「エリーサ様、カウフマン侯爵家の方がお見えになっております」
(あら、カウフマンのおじ様が?)
それでも朝から使用人たちがああでもないこうでもない、とエリーサのことを一生懸命着飾らせてくれたことが、無駄にならなくて良かったなと、ほっと胸を撫でおろした。
「お待たせしました、カウフマンのおじ……」
そう言いかけて、言葉を呑み込んでしまったのは、そこにいたのがカウフマン侯爵ではなく、息子のブロル・カウフマンであったからだ。
「ブロル……。どうしてあなたがここへ?」
「それはもちろん、君のエスコートのために……」
ブロル・カウフマン。年はエリーサの五つ上。もちろん、カウフマン侯爵夫妻の嫡男。次期カウフマン侯爵。艶やかな黒髪を後ろにビシッと撫でつけている彼は、エリーサの知っている彼とも雰囲気が異なった。だが、セルリアンブルーの瞳だけは昔から変わっていない。
エリーサはこの男が大の苦手だった。