母親代わりの不遇令嬢は、初恋の騎士団長から求婚される
エリーサが領地で弟たちのために働くことも、領民と一緒になって酒造に励むことも、彼から見たら「エリーサが無理をしている」という一言で片づけられてしまうからだ。
本心を見透かされたような気分になる。そのたびに、自身に「無理はしていない」と何度も言い聞かせてきた。
その他にも、彼のことが苦手な理由はとにかく多々ある。
何しろ、彼と一緒にいるだけで、エリーサの心臓がうるさくドキドキと鳴り出してしまう。
ようするに、エリーサは彼のことを意識している。つまり、彼に憧れていた。幼い頃からの憧れの人。雲の上の人のような、そんな存在だったのだ。
「え? あなたが私の相手なの? おじさまじゃなくて?」
「不満そうだな。君は、そんなに俺の父親がよかったと思っているのか?」
「いや、そうじゃなくて。その、てっきりおじさまのことだと思っていたから。オトマルもそのようなことを言っていたし」
オトマルはカウフマン侯爵ではなく、侯爵家と言っていたのだが、エリーサはそれにすら気づいていない。
「それに。あなたは仕事が忙しいって、おばさまがおっしゃっていたから……」
「仕事くらいなんとでもなる」
ほら、とブロルが手を差しだしてきた。
だが、エリーサは困惑してその手を掴むことができなかった。
「相変わらず、君は俺が嫌いなのか?」
「ちがっ……」
彼のことを嫌いだったことなど、今まで一度もない。
本心を見透かされたような気分になる。そのたびに、自身に「無理はしていない」と何度も言い聞かせてきた。
その他にも、彼のことが苦手な理由はとにかく多々ある。
何しろ、彼と一緒にいるだけで、エリーサの心臓がうるさくドキドキと鳴り出してしまう。
ようするに、エリーサは彼のことを意識している。つまり、彼に憧れていた。幼い頃からの憧れの人。雲の上の人のような、そんな存在だったのだ。
「え? あなたが私の相手なの? おじさまじゃなくて?」
「不満そうだな。君は、そんなに俺の父親がよかったと思っているのか?」
「いや、そうじゃなくて。その、てっきりおじさまのことだと思っていたから。オトマルもそのようなことを言っていたし」
オトマルはカウフマン侯爵ではなく、侯爵家と言っていたのだが、エリーサはそれにすら気づいていない。
「それに。あなたは仕事が忙しいって、おばさまがおっしゃっていたから……」
「仕事くらいなんとでもなる」
ほら、とブロルが手を差しだしてきた。
だが、エリーサは困惑してその手を掴むことができなかった。
「相変わらず、君は俺が嫌いなのか?」
「ちがっ……」
彼のことを嫌いだったことなど、今まで一度もない。