母親代わりの不遇令嬢は、初恋の騎士団長から求婚される
◇◆◇◆

 初めて訪れた王城。全てがキラキラと輝いているように見え、エリーサにとっては目を見張るようなものばかりだった。
 カウフマン侯爵夫人に言われた通り、国王陛下に挨拶をする程度で済んだ。
 だがそれも、隣にいたブロルのおかげかもしれない。彼はこう見えても、この王国騎士団の団長を務めている。あのブロルが、とその話を聞くたびにエリーサは思っていた。
 エリーサは慣れない場できょろきょろと顔を動かすしかできなかった。
 王太子殿下の婚約発表というめでたい祝いの席。参加している者たちは各々に話に花を咲かせ、踊り、そして飲んでいた。エリーサは人の多さに、ただただ耐えることしかできなかったのだ。
 だが、耐えることにも限界はあり、パーティーがお開きになる前に、その会場を離れることになった。というのも、そんな彼女の様子にブロルが目ざとく気づいたからだ。
「田舎者は、このような華やかな場所に来てはならないのよ」
 口元をハンカチで押さえながら、エリーサは言った。初めてのパーティーだが、印象派最悪だろう。
 エスコートをしてくれたブロルにも迷惑をかけてしまった。
「誰だって初めてはそういうものだ。緊張と人の多さに当てられる。少しずつ慣れていけばいい」
 エリーサの背中を優しく撫でながら、ブロルは言う。
「辛いなら、俺に寄り掛かれ」
 その言葉に素直に従う。触れ合ったところから彼の体温を感じてしまえば、静かに微睡む。不思議なことに、今だけはいつも五月蠅く鳴る心臓が落ち着いていた。
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